調和とバランス

 昨日の内容から続きますが、理想を掲げるとそれに向けて突っ走るタイプだった私は、何事も「良い」「悪い」と切り捨てる傾向がありました。

 

 子供が生まれてしばらくしてから、多くのお母さん達がそうなるように、私は子供の口に入れるものをそれまで以上に真剣に考えるようになりました。

 

 添加物や農薬などに敏感になり、様々な文献を読み漁って、何が体に良くて何が悪いのか、少しでも納得してからでないと食べるのが嫌になっていました。本屋さんや図書館にいけば、食べ物に関する本や雑誌が山のように置いてあります。そういったものをできるだけたくさん読んで、”正しい”知識を身に付けようと、意気込んでいました。

 ところが、そうした書物を読めば読む程、私は次第に窮屈さを感じるようになっていきました。それぞれの著者がそれぞれの理論を持ち、「あれが良い」「あれはダメだ」のオンパレード、読んでいるうちに一体何が食べて良いものなのかわからなくなってしまいます。中には、ある人が「これは最高の食べ物だ」と紹介している食材が、別の本では「これは食べてはいけない。体に毒だ」などと書かれていたりします。私は混乱しました。また、あらゆる食べ物をオーガニックにしなければいけない、という強迫観念にも苛まされたことで、精神的にも経済的にも、無理が出てくるようになっていきました。食べ物のことを考えることがストレスにさえなっていきました。

 

 本来、体を健康に保ち、精神も穏やかに保つための食べ物であるはずなのに、知識を詰め込み過ぎた上に全てを善悪で縛り過ぎたために、扱い方がわからなくなり、バランスが保てなくなったのでした。これでは本末転倒です。ストレスが大きくなれば、いずれ体にも症状として表れてくるでしょう。

 

 やはり、物事には調和とバランスが大事です。理想とする形があったとして、それを大切にするのはいいと思います。けれど、それにひたすら縛られてしまうと、現実とのズレやギャップを感じてストレスになります。過度なストレスは、心の調和を乱すだけでなく、ゆくゆくは体の不調となって出てきます。いくら体に気を遣っていても、食事を気にしていても、ストレスが過大であれば、人は体を壊すのです。何らかの健康法を実践している人より、気にせず好きなように生きている人の方が寿命が長い、という統計があるほどです。

 

 今の世の中を選んで生まれてきた私なのですから、今のこの世界を受け入れて、愛したいと思っています。食べ物だって飲み物だって、現実とのバランスを保ちながら、今あるものを感謝して受け入れたい。文句をいいながら、不満を感じながら食べたってちっとも美味しくありませんし、そのような心の状態が何よりも毒であるように思います。子供の様子を見ていても、母親があんまり口うるさく「これを食べなさい」「あれは食べてはいけません」などと言っていると、食べる喜びが半減しているのがわかります。親が神経質になり過ぎると、子供の食も細くなるのかもしれません。

 多少は体のことを気遣う必要があったとしても、極端にならないよう、やり過ぎてかえってマイナスの影響が出ないよう、気を付けたいと思っています。