シチュエーション(状況)が問題なのではなく、心の状態が問題

 今、自分が何か「問題」を抱えていて心境が穏やかではない場合、大抵は、そのシチュエーション自体に問題があるのではなく、それを「問題」と捉えている心の状態に悩みの発端があります。 

 

 ある方の悩みを聞いていた時のこと。その方は、ある状況を問題ととらえ、悪しき感情が湧き出てきて苦しんでいました。話を聞いているうちに、途中からその方はふと、「自分はなんでこんなに憤っているのだろうか」と感じたようです。そこから冷静に自分を見つめ直し、分析し始めました。次第に声のトーンも変わってきました。そしてまたしばらく話した後、

 

「あ、私はこういう思い込みがあったから、こんなに怒っていたんだわ」

 

とおっしゃいました。その方は理想が高く、自分が「かくあるべき」と強く信じることを、周囲にも広めたい、そして賛同してほしい、と考えるタイプでした。それで、ある事柄に関して他人と意見が食い違った時に、「どうして私の意見を取り入れてくれないの!」と怒りを覚えたのでした。

 けれど感情を吐き出しているうちに、頭に血が上っていた状態が落ち着いてきて、自分のそうした側面を客観的にとらえることができるようになりました。そして、周囲と意見が食い違っていることが問題なのではなく、自分が「こうあるべき」と強くこだわっていることこそが、自身の心を苦しめているに過ぎないことに気づいたのです。

 そこに気づいたら、いつの間にか心がヒートアップしていた状態から穏やかな心境に変化していき、最後には笑って「私なんであんなに怒ってたんだろう」とおっしゃるまでになりました。

 

 心に嵐が吹き荒れていた1時間前と、嵐が静まって平常な心に戻った現在と、”他人が自分に賛同していない”という状況は何一つ変わっていないのがポイントです。

 

 

 悩みが解決する時というのは、状況が変わった時より、その状況に対する自身のとらわれから解放された時に起こることが多いです。思い込みや執着などに縛られていたことに気づき、それをもう手放そうと決心した時、心が軽くなるのです。

 そして、不思議なことに、心がとらわれから解放されると、今まで自分を苦しめていた「状況」にも変化が表れていきます。他人が変わったり、環境が変わったりします。自分の心の状態が現象に反映された結果、自然とそうなっていくのです。