同じ苦しみを繰り返さないためには

 「今」、自分の心の中でモヤモヤと渦巻いている悪しき感情。ストレスやトラウマ。人間関係の悩み。

 

 少し引いた目でそれらを眺めてみてください。

 

 その悪しき感情を、人生の中で一番最初に感じたのはいつですか。そのイライラや怒り、悲しみ、嫉妬、恐怖を初めて味わったのはいつのことですか。

 

 多くの場合、最初の経験の記憶は、幼少期にまで遡ることになるでしょう。人が繰り返し味わう苦しみや悩みは、大元となっている経験があり、その時にしっかりと感情を消化することができなかったために、何度も似たようなシチュエーションが起こることになります。

 

 戦場から帰還した兵士や大きな災害を経験した人など、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされている人の心に向き合ってみると、実はその人が戦場や災害現場で味わった恐れや悲しみなどの感情が、幼い時のショッキングな経験に端を発していることがあるそうです。

 

 幼少時、感情が大きく揺り動かされるような出来事があった際、多くの子供は、その感情を素直に出すことを禁じられます。「怒るんじゃありません」「そんな風に騒いではダメ」「我慢しなさい」「どうして泣くの」etc...

 あるいは、敏感な子供であれば、親や周囲の大人達の反応を見て、自分が素直に感情を表現してはいけないんだ、感じてはいけないんだと考えます。そして、感情に蓋をして、それらを”感じなかった”ことに、”なかった”ことにする習慣が身についていきます。湧き上がってきた感情を否定したり、そんな風に感じている自分は悪い子だ、と考えるようになります。

 

 けれど、どんな感情も生じるべくして生じています。感情はその人の思考・信念の表れです。その人が考えていることや価値を置いていることをベースに、引き金となった出来事と反応して、自然発生的に産み出されています。自然に出てきているものを、本来止めることはできません。なかったことにするということは、自分に嘘をつくということです。

 

 その時に素直に感じなかった感情は、行き場を失って深層意識に蓄積されていきます。消えるわけではないのです。そして、その感情がきちんと消化され、受け入れられる時が来るまで、繰り返し繰り返し、その感情を味わうようなシチュエーションが起こります。

 

 自分が過去に味わった恐怖や悲しみ、その他あらゆるネガティブな感情を追体験するのはキツイですが、一度表に出してきちんと向き合わないうちは、いつまでも自分の中に残り続けます。今後似たような状況に繰り返し悩まされ続けることがなくなると考えれば、勇気を出してきちんと自分の感情に向き合ってみる。”あの時”の自分が本当はどのように感じていたのか、否定せずにしっかりと感じてみることで、心の重荷とネガティブなパターンから解放されていきます。

 

 原体験となっている、幼少時の出来事にフォーカスすることがポイントです。