苦しみの原因

 少し前に、働く女性のアンケート結果を目にしました。「一番の悩みはなんですか」との問いに対し、ダントツの一位は「人間関係」でした。この種の質問はだいたい、どんな世代でも、どんなグループの人であっても答えが同じであることが多いです。実際、悩んでいる人の話を聞くと、そのほとんどが対人関係の問題です。

 

 人間関係の悩み。具体的には、自分と他人との関係性から生じるネガティブな思いや感情に悩まされているパターンが多いように思います。つまり、人との関係性そのものや、今いる状況それ自体に悩んでいるというよりも、その状況に身を置いていることで生じている、怒りや嫉妬、恐怖、不安、閉塞感、みじめさ、悲しみといった悪しき感情に圧倒され、苦しんでいるのです。

 

 人との関係性は、自分の心の中の信念を表しています。自分が信じていることが、現象という形をとって自分の目の前に現れ、他人の振る舞いを通して、自分の深層にある意識に気づかせてくれます。

 自分に対して理不尽な振る舞いや物言いをしてくる人がいたとします。普通は怒りの矛先はその言動をとっている本人に向かうでしょう。けれど、その人を悪者にして、相手を責め続けていたとしても、状況が良くならないどころか、本質的な問題の解決にはなりません。たとえその人と離れられたとしても、根本の原因が未解決のままなので、しばらくしたらまた似たような人を人生に引き込むことになります。そして再び似たような関係性が始まり、それに対してかつての自分と同じような反応をしている自分に気づくはずです。

 

 同じようなパターンがなぜ繰り返されるかというと、それは自分の深層意識の中にある信念が変わっていないからです。他人は関係ないのです。他人は自分の内面を映し出してくれる鏡でしかありません。ベクトルを相手に向けるのをやめて、自分の内側をのぞき込み、そこに何があるのか、どんな信念を自分が抱いているのか、どんな思いが今のこの状況を創り出しているのか、気づいて癒して解放してあげない限り、同じ状況は延々と繰り返されます。

 本当は、薄々気づいていると思います。どんなにひどい、赦し難いことを相手が自分にしてきたとしても、どんなに相手が「悪い」としても、怒りをただその人にぶつけているだけでは、自分のこの苦しみが消えることはないということを。

 

 「赦し」は人生における最も難しい課題の1つかもしれません。けれど、これができないうちは、心が真に解放されることはなく、本当の意味での自由は得られません。

 

 心の内側にある信念や思いは、大変深い根を張っていることが多いです。場合によっては、生まれる前から引きずっているものもあり、魂として背負っている傷や課題であることもあります。そうした魂レベルの信念は、私達が自我意識として認識しているレベルでは解決することが難しいです。癒しが別次元のレベルで起こる必要があります。

 私達ができることは、祈り、魂レベルの癒しと解放を「お願い」することです。自分の力で何とかしようとするよりも、もはや手放して、大いなる力に委ねてしまった方が、癒しのプロセスがスムーズに起こりやすくなります。

 

 私が抱いている信念。「こうあるべきだ」「私は~だ」「~しなければいけない」という固定観念。私が私に対して抱いている評価。世の中に対する思い込み。これらは、深層意識の中にどっしりと鎮座し、長年我が物顔で人生を仕切ってきました。あまりにも当たり前のように存在し続けてきたため、存在そのものに気づきにくくなっています。私の魂は、わざわざ現象を通して、他人を通して、私がどのような思いを深い部分で抱いているのか、気づかせてくれています。現象に惑わされないでください。私を傷つけ、苦しめ、縛ってきた張本人は、時折目の前に現れる他人ではありません。私の中にいます。