サイコパス

 「サイコパス」。割と最近、耳にすることが増えてきた言葉かもしれません。

 

 サイコパスというのは、心理学用語で、ある特定の人格的特徴を持った人のことを言います。サイコパスの特徴としては、

 

●良心がない(先天的に欠如している)

●感情が薄い

●罪悪感や後悔の念を持たない

●自己中心的で、他人に同情することがない

●自分を守るためや、自分の利益を優先させるために、平気で嘘をついたり、人を騙したり傷つけたりする

●自尊心が高く、自分をよく見せるために手段を選ばない

●失敗したり責められても反省することがなく、平然と同じ行動をとり続ける

 

 といったようなことが挙げられます。脳の作りが普通の人とは異なるという、身体的な特徴も最近ではわかってきています。つまり、サイコパスというのは生まれながらにしてサイコパスなのであって、環境や教育次第でサイコパスを変えられるというものではないのです。社会の中に一定数(欧米では3~4%等といわれる)存在しているといわれ、私達の身近にも普通にいると考えられます。おそらく、どの人でも過去に一度や二度、サイコパスとは絡んだことがある(もしくは今現在関わっている)のではないでしょうか。

 

 サイコパスの人の中には、IQが高く、教師や弁護士、医者といった専門職に就いている人もいれば、社長やカリスマ経営者のような立場にいる人もたくさんいます。感情に動かされることなく、瞬時に冷静な判断がくだせるので、人を束ねたり、リーダーとなるのが得意な面もあるのです。また、サイコパスは比較的容姿に優れ、口達者で人を引き付ける魅力を持ち合わせている人が多かったりします。そういった人が悪の道に暴走してしまうと、カルト宗教のグルや、独裁者、凶悪犯罪者、詐欺師といった存在になりがちです。人を傷つけることを厭わず、他人は全員自分の駒としか見ていないので、どれだけの人が苦しもうが、どれだけの人に恨まれようが、自分が気持ちよければ、自分が得をすれば、それで全てOKなのがサイコパスの特徴です。

 また、サイコパスは決して自分を顧みたり反省することがないので、たとえ自分のとった行動が多くの人に批判され、普通の人なら立ち上がれないくらいの手ひどいバッシングを受けたとしても、驚くほど平然とまた社会に舞い戻ってきます。サイコパスには、そうした手打ちは全く意味をなしません。カエルの面に・・というくらい、世間からの叱責など気にも留めていないのです。おそらく、死ぬまでそれは変わりません。

 

 ここまで書いて、「あー、いるいるこういう人」と、何人かの有名人の顔が浮かんだかもしれません。しかし、サイコパスというのは、必ずしも社会の中で派手な地位に就いている人ばかりではありません。私達が日常的に接している人の中にも、十分サイコパスが紛れ込んでいる可能性はあります。私自身も、これまでに出会った人を振り返ってみると、幼少時から含め、数人思い当たります。

 こちらの良心を無残に裏切られ、びっくりするような仕打ちを受けたことが何回かあります。その時は、サイコパスという言葉も存在も知らなかったため、ただただ悲しく、ショックを受け、落ち込んだものです。そしてその後、どうしてあんな人を信じてしまったのだろうかと、自分を責めました。世の中には、このように平気で嘘をつき、人を騙し、そして全く罪悪感を抱くことのない人がいるのだ、と知りました。

 

 気持ちが優しく、奉仕の精神にあふれている人は、サイコパスの餌食になりやすいので、要注意です。

 

 サイコパスの人は、誰にも救えません。生まれてから死ぬまで変わらないのです。助けてあげたいとか、教えてあげたいとか、変えてあげたい等と思わない方が良いです。自分が消耗します。もしサイコパスと思われる人と関わっていたら、とにかく距離を置くこと。極力関わらないのが得策です。

 サイコパスの人は、人の感情は”理解”することはできませんが、知識や経験として”知る”ことはできるようです。例えば、怒りや悲しみを抱いている人がいたとしたら、一般的な場合、その感情を自分も同じように感じ、同情したりします。ところがサイコパスは、感情そのものを自分が感じることがほとんどありませんから、同じように”感じる”ことはできません。その代わり、「こういうことを言ったら人は”怒る”のだな」とか、「こういうことが起こると、人は”悲しむ”のだな」といったように、知識として感情を”知る”のです。そして、自分を優位に立たせるために、今度はその感情を上手く利用するようになっていきます。

 感情に自分が動かされることがありませんから、人が感情で動くということを経験で知った後は、とても冷静に、そして狡猾に、感情で人をコントロールしたり、打ちのめしたりして、自分の都合の良いように他人を操ろうとします。時には、涙を流したり、感動しているふりをしたりして、他人の同情を誘ったりもします。それは、「涙を流すと人は優しくしてくれる」「感動した様子を見せると、自分の味方になってくれる」という知識を上手く利用しているだけで、本当に悲しかったり感動しているわけではありません。

 

 気持ちが優しい人は、サイコパスのそういった狡猾さを、見抜く目を持ってください。残念な事実かもしれませんが、この世の中は、良心のかけらを持たない、こうした人が一定数存在しているのです。自分を守るために、そうした人から距離を置いてください。

 

 スピリチュアルな団体のグルを名乗っている人や、自己啓発系のセミナーを開いている人の中にも、サイコパスは潜んでいます。彼ら・彼女らは、気が弱く、自分に自信がなく、でも何か変わりたいと思っている人を利用するのが得意です。ある特定の手法を使って、耳に聞こえの良い言葉を使い、自分についてくれば幸せになれるよ、人生が好転するよ、お金持ちになれるよ、と上手に誘導していきます。または、敢えて恐怖心を煽るような脅しをかけてくることもあります。恐れが人を操る最も簡単なツールであることを知っているのです。自分に自信がない人は不安をたくさん抱えているものなので、そこを上手く利用しているのでしょう。そしてそういう人は、堂々とした振る舞いやカリスマに弱いということも知っていますので、自分を神のように見せたり、見た目や雰囲気を作ることに労力を使います。

 

 もし騙されたり、一時でもついていってしまった経験がある方も、どうぞご自分を責めないでください。人は経験しなければ本当の意味で学ぶことはできません。人生で起こるどんな出来事も、自分にとっては貴重なレッスンであり、成長のために必要なステップだったはずです。その経験を活かし、これからの人生と、社会に役立てていきましょう。

 

 それから最後に、サイコパスに一度でも痛い目にあわされたことがある経験がある方は、どうしてもゆるせない、という怒りの感情が湧いてくるかと思います。けれど、怒りは自分の意識を汚します。一銭の得にもなりません。サイコパスはサイコパスで、何らかの役割があってこの世に存在しています。彼ら・彼女らの存在を否定するのではなく、葛藤はあるかもしれませんが、存在自体は受け入れるようにしましょう。罪を憎んで人を憎まず。自分の受けた傷は自分で癒し、他人を恨まないようにしましょう。